最近、エンジン始動時にセルモーターが重く感じるようになりました。
具体的には一瞬動いてから約0.5秒程セルモーターが回らず、そこから正常回転すると言った具合でございます。
バッテリーは乗車回数の少なさから乗らないときは車輛から取り外し、乗車前にしっかり充電してから取り付けているためバッテリーが弱いと言うことは考えにくい状態です。
調べてみるとドゥカティのセルモーターの故障事例はそこそこあるみたいですね。
故障と言うかセルモーターの定期的なメンテナンスが必要と言うことでしょうね。
部品をパーツリストで調べてみると内部補修部品だけでの供給品番はなく、通常の修理であればASSY交換となるようです。
価格も調べてみましたが、セルモーターASSYは¥68,283.-することも分かりました。(価格は2021年11月時点)
私が高額なASSY交換などするわけがなく、修理方法を調べます。
車両のスターターを見てみるとかすかに見えるMade in Japan。
DENSO製品だと言うことが判明しました。
写真でははっきり品番確認出来ませんが純正品番を調べました。
ドゥカティ純正品番: 27040051A
デンソー品番: 428000-1070
DENSO製品なら内部補修部品があるはずだと思い調べてみるとドゥカティ純正部品で補修部品が出てきました。
ドゥカティ純正品番 : 067050815
約¥6,000.-だせばブラシホルダーとブラシは手に入ることが分かりました。
ドゥカティのセルモーターは1984年〜2014年くらいまで基本構造は変わっていないようで、ほとんどのセルモーターはこの部品でブラシ交換はできることが分かりました。
しかし、日本メーカーのセルモーターで補修部品がこれだけ高いのには納得が出来ず、更に調べます。
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交換部品の選定
スズキのセルモーター31100-38300の内部部品の大半部品がドゥカティ用セルモーターのオーバーホールに流用して使用出来ることが判明。
※多少の加工は必要です。
今回、セルモーターオーバーホールのために下記部品を揃えました。(価格は2021年11月時点)
- カーボンブラシホルダー 旧品番 31132-44110 現行品番31132-27A01 ¥1,485.- (必要数1)
- カーボンブラシ 31130-38300 \352.- (必要数1)
- ブッシュ 31171-38300 ¥132.- (必要数1)
- Oリング 31264-44110 ¥286.- (必要数2)
- オイルシール 31153-49210 ¥572.- (必要数1)
- ブッシング 31172-38300 ¥132.- (必要数1)
- Oリング 31143-38300 ¥154.- (必要数1)
- Oリング 31156-38300 ¥110.- (必要数2)
- シムセット 31170-43400 ¥176.- (必要数1) 不要でした。
- ナット 08361-3506a ¥55.- (必要数2) 1個しか使用しておりません。
- ワッシャー 09160-06129 ¥66.- (必要数1) こちらも不要でした。
ドゥカティ純正部品
- チェンジペダルオイルシール 937831524 ¥614.- (必要数1)
- セルモーターガスケット 旧品番 78810541A 現行品番 78810542A \380.-(必要数1)
- スナップリング 旧品番 735001237 現行品番 88210031A ¥217.-(必要数1)
- メンテナンスカバーOリング 88640351A ¥576.-(必要数1)
- オイルパイプOリング 88650151A ¥67.-(必要数4)
- 液状ガスケット スリーボンド1215 \1,636.-
これで、オーバーホールのための部品が揃いました。
ジェネレーターカバーの取り外し
部品が全て揃ったため、早速作業に取り掛かります。
※バッテリーマイナス端子は必ず外して作業ください。 ショートする可能性がございます。
始めにエンジンオイルを抜き取ります。
次にスプロケットカバー、レリーズシリンダー、そしてシフトチェンジリンクも取り外しておきます。
ボルトを緩めエンジンセンサーを取り外します。
クランクシャフトの位置にあるメンテナンスカバーを取り外します。
サイドスタンドのセンサーを取り外し、ジェネレーターカバーのヘキサゴンボルト13本を全て取り外します。
外したボルトは位置が分かるようにしておきました。
ここからSSTを使用しジェネレーターカバーを取り外します。
私はドゥカティ純正のSST(プーラー)を使用しましたが、他メーカーのプーラーでも問題なく作業できると思います。
ジェネレーターカバーが外れました。
セルモーターの取り外し
オイルラインを取り外します。
ニップルナットには緩み止めが塗布されているので少し固めです。
次にセルモーター取り付けボルトとプラス端子を取り外します。
後はジェネレーターカバー側のボルト3本を取り外しセルモーターを回しながら引き抜けば外れてきます。
セルモーターが車輌から外れました。
セルモーターの分解
それではセルモーターを分解していきます。
組付け時の間違い防止のために合いマークを入れておきます。
※私は1本線で合いマークを入れましたが上下を間違えないようにどちらかを2本線で合いマークをいれることをおすすめします。
次にピニオンを外すためにスナップリングを取り外し、ピニオンを取り外します。
ここで私の持ってたスナップリングプライヤーが穴用(握ると閉じる)だと気付き、マイナスドライバーで外していたらスナップリングが開いてしまいました。
そのため、組み付け時にスナップリングも交換します。
※軸用のスナップリングプライヤーもこの後購入。
ボルト2本を取り外し、セルモーターを分解します。
内部は大分汚れています。
各部を清掃していきます。
コイルモーターの清掃
写真のブラシが接触する部分を清掃致します。
耐水ペーパー#1000を使用しコイルモーターを回しながら均等にこすって汚れを落とします。
セルモーターのオイルシール交換
セルモーターカバーについているオイルシールを交換します。
このオイルシールに漏れがあるとセルモーター内部にオイルが侵入し、セルモーターが故障します。
今回、このオイルシールを交換するためにここまで分解したといっても過言ではございません。
なぜなら、ブラシ交換だけなら、セルモーターの取り外しは不要でオイルラインを外し、セルモーター後ろ側からカバーを取り外せば交換可能のようです。
※モンスター1000Sはオイルライン側にもセルモーターの固定箇所があるのでもしかしたら作業できない可能性がございます。
オイルシールを取り外し、新しいオイルシールを組付けます。
このオイルシールてすが、すんなり取れず、ほぼ破壊した形で取り外すことが出来ました。
新品のオイルシールは15mmのソケットで叩いて組み付けました。
ブラシホルダーの交換
新品のブラシと比べてみると2.3mmほど摩耗しています。
走行距離4万キロ超えですが、思ったよりは摩耗していませんでした。
新品のブラシ形状が長くそのままではセルモーターボディに干渉してしまうため少し曲げて使用します。
ブラシホルダーはスズキ純正品とほぼ同じ形状ですね。
こちらも約2.0mmほどブラシが摩耗しています。
黒い絶縁ベースの形状が入手したスズキ純正とついていたドゥカティ純正で違うため、やすりで削って取り付け出来るようにします。
1mmほど削りました。
後は部品を組み付けていきます。
最後にピニオンを取り付け、スナップリングをつければ完成です。
セルモーター作動点検
念のため、組付け前に作動点検を行っておきます。
バッテリープラス端子とスターターのプラス端子、バッテリーのマイナス端子とボデーアースを繋ぎます。
繋ぐと言ってもブースターケーブルを作動時間だけボデーにくっつける感覚です。
火花も散りますので安全には注意して作業下さい。
左回りで回転することを確認しました。
セルモーターの取り付け
セルモーターを車輛に取り付けていきます。
ボルトに緩み止めを塗布して組付けていきます。
取り付けトルクは 10Nmです。
オイルラインの復元
オイルラインを復元していきます。
ニップルナットに緩み止めを塗布して組付けます。
オイルパイプのOリング交換し、組付けていきます。
そしてセルモーターのプラス端子を取り付けます。
ジェネレーターカバーの取り付け
今回の作業の一番の山場となりますジェネレーターカバーを取り付けていきます。
まずはジェネレーターカバー、エンジン側についているシールパッキンをきれいに取り除きます。
せっかくジェネレーターカバーを取り外したので上死点確認窓のオイルシールも交換します。
カバー取り付け前にオイルシールを取り外しておきます。
※内側から叩けば簡単に取り外しできます。
ドカティ品番:25410011A
ジェネレーターカバーにシールパッキンを下記のように塗布して取り付けます。
ボルトの締め付けトルクは 10Nmです。
取り付けました。
メンテナンスカバーのOリングを交換し、メンテナンスカバーを取り付けます。
上死点確認窓の取り付け。
チェンジペダルオイルシールを取り付けます。
交換方法は下記記事をご覧ください。
エンジンセンサーを取り付けます。
最後にレリーズシリンダーとスプロケットカバーを取り付けて完成です。
エンジンオイルの注入及び作動点検
液体ガスケットが乾くのを2日程待ってからエンジンオイルを入れます。
そして、エンジンを始動しセルモーターの作動点検を行いました。
一瞬セルモーターが止まるような動きはなくなり、回転が軽くなりました。
最後に各部のエンジンオイル漏れがないかを点検し完成です。
今回の作業はシールパッキンでのカバー取り付けがあるため少し手間の掛かる整備ではございますが、これでまた気持ちよくドゥカティに乗れそうです。
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